どうも、海馬(@Transtier)です。
僕は外資系物流企業でオペレーション・マネジャーとして働いています。現場管理が主な仕事のため、メンバーに直接指示を出したり、仕事を教えることが多い立場です。そこで、コーチングについて学びを深めてきました。
コーチングはサイエンスではなく、アート、すなわち理論だけでは再現性は正直ないと思っています。なぜなら同じ言葉を言うにしても、言葉を発する人の人間性や権威、外見などあらゆる要素に影響されてしまうからです。
しかし、知らないよりは知っている方が断然役に立つということは疑いようのない事実です。そこで今回はこれまで僕が学んできたことを総ざらいする意味を込めて、コーチングのまとめ記事を書きたいと思います。
それぞれ参考記事をリンクしておきますので、知らなかったことや興味を惹かれる内容があれば、ぜひあわせて読んでみてください。
目次
コーチングの基本について
コーチングの定義
コーチングを簡単に定義すると以下のようになります。
コーチングとは、組織目標の達成と人材育成のために、1対1でメンバーの主体性を引き出す考え方とスキルである。
組織目標の達成と人材育成という両立を目指し、コーチとメンバーが1対1でコミュニケーションを行うというのがコーチングとして定義されています。少し高めの組織目標があり、それを達成するためには組織のメンバーの成長が不可欠です。そしてメンバーが成長して組織目標が達成できたら、さらに高い目標を掲げ、人材育成を進めていく。
まさに正のスパイラルを巻き起こすことがコーチングの目的だと言えるんじゃないでしょうか。
メンバーの主体性を引き出す
先ほどの定義でもう1つ重要なポイントがありました。それがメンバーの主体性という言葉です。主体性というのは、以前に僕が務めていた会社では”当事者意識”とも呼ばれていましたが、要するにメンバー自身が考え、自分の意思を基に行動できるようになるというのがコーチングで目指す人材育成のゴールです。
メンバーがとても優秀で、コーチの指示や命令を完璧にこなす。それは確かに貴重な人材ではありますが、主体的な人材とは呼べないわけです。誰かの指示や命令がなければ動けないという指示待ち人間を増やすのではなく、主体的なメンバーを増やす。そのためにメンバーの主体性を引き出す考え方やスキルがコーチングです。
参考記事:コーチングスキルの基本 |【理想の職場】は組織目標の達成と人材育成の両立
コーチの役割
メンバー・オリエンテッド・アプローチ
コーチングでは、メンバーの主体性をコーチがうまく引き出せるかが成否の鍵を握っています。主体性とは「人から言われたからやる」や「言われたことだけをやる」という態度ではなく、その仕事を取り組む意味や、その仕事が組織全体の中でどのような意義を持つのかを納得した上で、自ら進んで考えて行動しようとする姿勢と言えます。
そこで、コーチがメンバーに対してアプローチをする際にはメンバー・オリエンテッド・アプローチを取ることが求められます。メンバー・オリエンテッド・アプローチは日本語に訳すと「メンバーを重視したアプローチ」となります。
コーチの都合を優先することはせず、メンバーの個性、すなわち能力や興味・関心に基づいて支援していく必要があります。
参考記事:メンバーの主体性を引き出すコーチングスキル|メンバー・オリエンテッド・アプローチとは
メンバーの能力と意欲を高める
メンバーの主体性、すなわち自主的に動く姿勢を引き出せたなら、次は実際に成果を上げられるように支援していきましょう。成果を上げるためには、メンバーの能力と意欲が共に高い状態にある必要があります。
能力 X 意欲 = 成果
かけ算ですので、能力が高くて意欲が低くても成果は上がりませんし、逆に意欲が高くても能力が低ければそもそも仕事になりませんよね。そのため、コーチはメンバーの能力と意欲のどちらも高いレベルに引き上げていけるように支援していきます。
能力はその人全体に対する能力ではなく、個々の仕事や作業についてのスキルを指しますので、全人的に「あの人は能力が低い」と評価することはせず、スキル単位で考えていきましょう。
そして、能力よりも重要なのが意欲です。意欲が低いメンバーへ何かを教えようとしても、覚えが悪くなる可能性があります。
メンバーの意欲をコーチが評価する際には、次の3点について評価します。
- 強度:意欲の強さ
- 方向性:興味、関心
- 持続性:意欲がどの程度持続するか
参考記事:効果的なコーチングを行うために|メンバーの能力と意欲を主体的に高めていく
コーチにとってのメリットとは
コーチングはメンバー主体で行うので、コーチはかなり気を使ってコーチングを進める必要があります。コーチは組織においてハイパフォーマーであることが多く、自分の仕事も多く抱えているはずです。そこにさらにコーチングでメンバーを指導することのメリットはあるんでしょうか。
実はあるんです。それは「教うるは学ぶの半ば」という言葉通りではありますが、コーチがメンバーを指導することにより、コーチ自身が新しく学びを得ることができるのです。さらに、それだけではありません。
以下の4つもメリットとして挙げられます。
- コーチ自身のスキルや経験の棚卸しができる
- コーチの仕事の幅が広がる
- コーチのマネジメントの経験となる
- コーチの人材育成評価が上がる
コーチを任された人は、めんどくさがらず、自分にとっても大きなプラスなんだということを理解し、さらに組織から期待されているんだと考えて前向きに取り組んでいきましょう。
参考記事:教うるは学ぶの半ば|コーチングを行うことでコーチが得られる4つのメリット
メンバーの育成計画を立てる
コーチングに必要な育成計画
何事もそうですが、無計画に物事を進めていくより、事前に計画を立ててから進めた方が失敗は少ないですよね。綿密に計画を立てたところで予期せぬイレギュラーは発生するものです。その影響を最小限に抑えるためにも、また途中で目的を見失わないためにもメンバーの育成計画はしっかり立てましょう。
その際、以下の点をしっかりと固めます。
- 育成目標
- 達成手段
- 指導・支援の方法
育成目標設定の手順ですが、まずは問題を洗い出します。問題はメンバーに求める姿と、現在の姿との間にあるギャップのことを指します。メンバーに80%の精度で業務を期待していたとして、メンバーが50%の精度しか持っていないとしたら、その精度が30%不足しているということがメンバーの問題として挙げられます。
育成課題は精度を30%向上させるために取り組むべきことであり、育成目標は精度80%を実現したことによってメンバーに期待するレベルと言えます。
達成手段を検討する
育成目標が設定できたら、次は「どのようにして達成するか」という達成手段を検討し、スケジュール化します。その際、達成手段はメンバーを巻き込んで決定しましょう。
コーチングで重要なことは主体性というキーワードです。コーチが一方的に与えた育成目標やスケジュールでは、メンバーはやらされ感が募ってしまい、反発心を持つことになりかねません。
コーチとメンバーはお互いに納得のいく達成手段を導き出せるようにしましょう。
指導・支援の方法を決める
コーチングでは主に「教える」と「考えさせる」という2つの手法があります。メンバーの主体性を引き出すという観点から考えると、「考えさせる」方が理にかなった手法です。しかし、仮にメンバーが新入社員だったとしたらどうでしょうか。
考えさせたとしても、有効な考えは浮かんでこないでしょうし、苦痛に感じてしまいますよね。それは双方にとって時間の無駄となってしまうかもしれません。そこで、メンバーの発達度によって指導・支援方法を変更するという考え方が必要になります。
それがブランチャード博士が提唱したSL II(Situational Leadership Theory II)、日本語では状況対応型リーダーシップ理論と呼ばれる考え方です。発達度はメンバーの能力や意欲の高さによって決定されます。そして、それぞれの発達度に応じて取るべき支援の方法は次の通りです。
- 指示型:仕事についての指示・命令を与え、丁寧に指導する
- コーチ型:指示と支援的な働きかけの両方を強める
- 支援型:具体的な指示は弱め、支援には力を入れる
- 委任型:メンバーに任せる
上から順に発達度が低いメンバーに対応しており、下の委任型はベテランのメンバーに適用される手法となります。詳しい記事は以下の参考記事を読んで頂ければ幸いです。
コーチングで必須の3つのコミュニケーションスキル
自分のコミュニケーションを確認する
いよいよコーチングで重要な3つのコミュニケーションスキルを紹介していきます。コーチングはコーチとメンバー、1対1のコミュニケーションで成り立っているため、コーチのコミュニケーションの取り方が非常に重要です。
育成計画を綿密に立て、スケジュールも準備し、指導・支援の方法を決定したとしても、コーチのコミュニケーションスキルが低かったら、メンバーも心を開いてくれません。そこで、まずはコーチ自身が次のようなコミュニケーションを取っていないか確認しましょう。
- 必要なこと以外説明しない
- すぐに解決策を提示してしまう
- メンバーの話を聞こうとしない
もし上記3つに当てはまっていると感じたら、以下で紹介する3つのスキルを意識して習得するようにしましょう。
状況説明のスキルを学ぶ
先ほどの要注意コミュニケーションにおいて、必要なこと以外メンバーに説明しないというタイプの人は状況説明のスキルを意識して学ぶ必要があります。状況説明のスキルは「状況の法則」という考え方に則っています。
状況の法則とは、イギリスの経営学社であるM.P.フォレットが提唱した考え方で
「他人からの指示や命令であっても、その背景となる状況を伝えることで、メンバーに納得して受容される」
というものです。必要なことは伝えてあるんだからいいだろうと思うかもしれませんが、それだとメンバーにとってはコーチから押し付けられたと感じてしまいがちです。そうではなく、背景となる状況を理解し、納得した上でメンバーがそれを自らやりたいと思わせるような配慮が必要ですね。
また、説明をする際にはPREP法を意識して行いましょう。PREP法とは
- Point:結論
- Reason:理由
- Example:例
- Point:結論
というように結論から先に話し、理由や例を挙げ、最後に結論を再度示すという流れですね。
参考記事:状況の法則とPREP方で気づきを促す|コーチングで重要な状況説明のスキル
発問のスキルを学ぶ
メンバーへすぐに解決策を提示してしまうタイプのコーチは、発問のスキルをしっかりと学びましょう。発問とは質問と違い、コーチがメンバーに考えさせるために行います。
- 質問:コーチが答えを知ること、確認することを目的として行う
- 発問:メンバーに考えてもらうことを目的として行う
このような違いがあります。発問はメンバーに考えてもらうことで、メンバーの気づきを広げる狙いがあります。メリットが多い反面、発問のスキルが適さない場合があるので、そこはしっかりと理解しなければなりません。
具体的にはトラブルの最中であったり、メンバーの発達度が高くない場合です。緊急時ではメンバーに考えてもらう余裕はありませんし、先ほど話したように新入社員に考えさせようとしても難しいからですね。
参考記事:質問と発問の違いを抑えて気づきを広げる|コーチングに重要な発問のスキル
傾聴のスキルを学ぶ
メンバーの話をしっかりと聞くことができない。そんなタイプは傾聴のスキルを学びましょう。傾聴とは話の内容を聞き取るだけではなく、メンバーの言葉の裏側に隠された感情や意図まで汲み取ることを目指します。言葉と感情、その両方を合わせて真意と呼びます。
メンバーの真意をしっかりと掴むことが傾聴の目指すところなんですね。
傾聴のスキルで相手の真意を掴むことができたら、コーチはメンバーへフィードバックを行います。フィードバックには次の3つがあります。
- 内容フィードバック
- 感情フィードバック
- 要約フィードバック
名前の通り、話の内容をメンバーに確認するためのフィードバック、感情を確認するためのフィードバック、そして内容と感情をコーチが要約して確認する要約フィードバックの3つです。
この傾聴のスキルとフィードバックを活用し、メンバーの気づきを深めていきましょう。
参考記事:傾聴のスキルとフィードバックでメンバーの気づきを深める|コーチングスキル
まとめ
以上、僕がコーチングについて学んだことをまとめてみました。参考記事として紹介している記事は、それぞれが3,000文字前後のボリュームとなっています。ぜひそれぞれの記事も読んでもらえたら嬉しいですね。
コーチングは様々な分野で取り入れられていますが、今回僕が学んできているのは仕事でのコーチングとなります。当ブログは仕事だけではなく、人生に対する考え方や目標達成についても学んでいるので、またコーチングの新たな知識が増えたら記事として書いていきたいと思います。
そして、この記事もどんどんアップデートして内容をパワーアップしていければと思っているので、よろしくお願いします。
それでは、また。
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