質問と発問の違いを抑えて気づきを広げる|コーチングに重要な発問のスキル

どうも、海馬(@Transtier)です。

皆さんは仕事上でメンバーから質問を受けた時、どのような対応を取ることが多いでしょうか。僕は人にアドバイスをすることが好きなので、メンバーから質問をされるとすぐに解決策などをアドバイスしたくなってしまいます。時には自分が調べて伝えることもあるくらいです。

コーチングにおいてメンバーの主体性が引き出すことが重要でした。僕のようにすぐに解決策をアドバイスしてしまうと、メンバーはそれ以上考えなくなってしまうので、あまり良くありません。

そこで、今回はメンバーの気づきを広げるために行うべき発問のスキルについて紹介していきたいと思います。

 

メンバーへの対応3つ

メンバーから相談を受けた時、大抵の人は以下の3つの対応を取ると想定されます。

  1. 「こうすればいい」と解決策をアドバイスする
  2. 「自分で考えて」とメンバー自身に考えさせる
  3. 「あなたはどうしたいの?」と問いかける

それぞれについて考えていきましょう。

解決策をアドバイスしてしまう

これは僕が取ってしまいがちな対応です。先にも書きましたが、コーチングではメンバーの主体性を引き出すことが重要なことでしたので、すぐに解決策をアドバイスするというのは適切なコーチングとは言えませんよね。

コーチとしてはメンバーに有益なことをアドバイスできているという優越感を感じがちですが、メンバーは自分で考えようとせず、指示を待つようになってしまいます。これは良くないですね。

メンバー自身に考えさせる

これはメンバー自身に考えさせるタイプなので、メンバーの主体性を引き出すことに繋がりそうです。しかし、伝え方に問題があるのかなと思います。コーチがメンバーを突き放している感じがありますよね。

メンバーなりに考えて、それでも分からないことをコーチに相談しに行ったのに、「自分で考えて」と突き放される。これで素直に考えられるタイプであればいいですが、僕だったら反発心を募らせてしまいますね。

以前の職場の上司がこのタイプだったので、とても嫌な気持ちになったことを思い出しました。

メンバーへ問いかける

メンバーへ考えさせたいのであれば、メンバーへ問いかけを行い、寄り添いながら考えてもらうことが大切です。これがコーチングにおいてメンバーから相談を受けた時の理想的な対応ですね。

人間は問いかけられると、その答えを自然に考えてしまいますよね。本来はメンバー自身にも多様な考えがあるはずなのに、それをうまく引き出すことができていないという場合に問いかけを行い、メンバーが考えを整理していくことを手助けします。

相手に考えさせるために行う問いかけのことを発問といいます。発問質問の違いについては次で説明します。

 

質問と発問の違い

質問と発問の定義

普段の生活においてはあまり使う機会がない発問ですが、似ている言葉の質問とどう違うのでしょうか。簡単に言えば、以下のようになります。

  • 質問:答えを知ること、確認することを目的とする
  • 発問:相手に考えさせることを目的とする

このような違いがあるということをまず頭に入れた上で、それぞれの問いかけについて考えたいと思います。

質問の場合

メンバーからトラブルが起きている相談を受けたと仮定した場合、質問で問いかけると、

  • 何でこんな状況になったのか
  • どうしてもっと早く相談しに来なかったのか

というようにメンバーを責めるような問いかけになってしまいます。これは僕もされた経験があるのですが、このように質問責めをされると、メンバーは自分を正当化しようと言い訳ばかり考えてしまいます。少なくとも僕はそうでした。

質問責めをしてメンバーを萎縮させてしまうよりは、やはり発問でメンバーの主体性を引き出すことが重要なんですね。

発問の場合

質問ではなく、発問でメンバーに問いかけた場合はどうなるでしょうか。

  • 問題の原因は何だと思いますか?
  • 他に考えられる原因はありますか?
  • 再発させない為にどうしたらいいと思いますか?

というように問いかけることで、相手を萎縮させずに考えてもらうことができます。こうした問いかけを行うことで、メンバーの主体性を引き出し、知的好奇心を刺激したり達成欲求や成長欲求を満たすことができるんですね。

コーチングの成果は、コーチの発問のスキルによって大きく変わってくると言っても過言ではなさそうです。

発問が適さない場合

重要なスキルである発問ですが、以下の場合には別の対応を考えた方がいいかもしれません。

①トラブルなど緊急性が高い場合

顧客からクレームが発生している状態、あるいは仕事上でミスが起こっている最中など、緊急事態の場合はメンバーの主体性を引き出している場合ではないですよね。その場合は質問で状況を把握し、指示や命令でその場を収めるということが必要でしょう。

②メンバーの発達度が低い場合

新しく働き始めたメンバーの場合、そもそも考えるための引き出しが少ないので、発問で考えさせるというのは適切な対応ではない場合が多いです。まずは仕事の基本を「教える」ことから始め、基本ができるようになったら徐々に考えさせる発問へ移行させましょう。

 

メンバーの発達度に関しての話は以下の記事に書いていますのであわせてどうぞ!

関連記事: メンバーの発達度を決める2つの要因と4つのマネジメントスタイル

 

発問を行う5つの狙い

1. 自ら考えることを促進する

コーチが指示・命令だけを与え続けているとメンバーは考える機会を失ってしまいます。コーチからメンバーへ問いかけることによって、メンバーは自ら考えるきっかけをもつことができます。そうすることでメンバー自身の気づきが広がり、成長することができるんですね。

2. 問題解決能力を伸ばす

仕事をしていると、どうしても問題は発生します。そうして問題に直面した時、思考停止をしてすぐに相談にくるというのは主体的なメンバーとは言えないですよね。発問によってメンバーに考えるヒントを提供することで、メンバー自身が問題が発生している状況を整理し、解決していけるように支援することができます。

3. 視野を広く持たせる

仕事において大切だと僕が考えているのは、後工程の人をいかに楽にさせられるか、ということです。それが同じ部署の人であれ、他部署であれ、後工程の人が苦労するようなやり方というのはよくないですよね。発問によって自分とは異なる立場についても考えてもらうことで、仕事を俯瞰的に見ることができるようになります。

4. 自己効力感を高める

「自分はやればできる」という感覚を持ってもらうこともコーチングでは重要です。メンバーの意欲を高めるためには、自己効力感はとても大切な要素だからです。自分ができない仕事に対し、高い意欲を持ち続けることは難しいです。自分で考えて問題を解決する経験が増えることで、「自分はやればできる」という気持ちになり、意欲が高まります。

5. 心理的反発を避ける

他者から与えられた解決策と、自分が考えた解決策とでは、内容が同じであっても受け取り方が違います。他者から与えられた解決策では、どうしても「やらされ感」が出てしまい、主体的に取り組めないというメンバーもいます。自分で考えた解決策であれば言い訳もできないので、解決策の実行に主体的に取り組むことができるようになるでしょう。

 

育成目標設定時の発問

これまではメンバーから相談をされた時に気づきを広げてもらう意味での発問を説明してきました。

ここからは育成目標を設定する際など、コーチとメンバーがじっくりと向き合って話をする際の発問について学んでいきたいと思います。

答えやすい発問から始める

メンバーへの発問は、最初は答えやすい発問から始めましょう。いきなり「あなたの死生観についてどんな考えを持っていますか?」などと訊かれたら、普通は困ってしまいますよね。まずはメンバーが答えやすいようなこと、例えば現在担当している業務についてなどの発問を行なって心理的な安心感を持たせ、徐々に難しい発問へ移行していきます。

育成目標を考える5つの発問

コーチングのテーマもメンバーも様々なので、一概にどれが正解とは言えませんが、大切なことはメンバーが答えやすいように体系立てて発問を行なっていくことです。

  1. メンバーの「あるべき姿」を具体化するための発問
  2. 現状を把握するための発問
  3. 問題を特定するための発問
  4. 育成課題を明らかにするための発問
  5. 育成目標を設定するための発問

育成目標設定の手順で話しましたが、まずはメンバーの「あるべき姿」を具体化します。問題というのは「あるべき姿」と「現状」の間にあるギャップのことだからですね。こうしてメンバー自身に自分の弱点や長所を考えてもらい、双方が納得した上で育成目標を設定していくことが大切です。

 

育成目標の設定に関しての話は以下の記事に詳しく書いていますのであわせてどうぞ!

関連記事: メンバーの問題と課題から育成目標を設定する

 

誘導尋問にならないように

メンバーに考えてもらい、答えを引き出すことが発問の目的ですが、コーチとして「メンバーにこう答えてほしい」という意図が丸見えな発問というのは意味がありません。メンバーから不信感を持たれてしまうこともありますし、何よりメンバーが空気を読んで答えただけなので、本当に「考えさせた」ということにはならないからですね。

コーチはこう考えているが、メンバーはどう考えているか。そのことをしっかりと双方が納得できるように話し合いを設けることが必要です。

 

3つの発問を使い分ける

最後に、大きく分けて3つのグループに発問を分けて紹介します。

クローズド発問とオープン発問

クローズド発問というのは「AかBのどっち?」という場合や「YesかNoか」というように考える範囲が限られている発問です。

オープン発問は選択肢がなく、考える範囲に制限がありません。コーチングの目的に適っているのはオープン発問ということになります。しかし、いきなりオープン発問をされてもうまく考えがまとまらなかったり、答えられなかったりすることもありますよね。

そこで、まずはクローズド発問でメンバーの答えやすい発問を投げかけていき、徐々にメンバーとの間に会話のリズムができたところで徐々にオープン発問を使って考えを深めていくことが大事です。

肯定的発問と否定的発問

メンバーに考えてもらう際、「なぜできないのか?」と否定的発問をしてしまうと、メンバーはできない理由を探すことしかできなくなります。考える方向が1つしかないので、考えを深めているとは言えませんよね。

「どうしたらできるようになるか?」という肯定的発問であれば、様々な条件や方法を考えることができます。また、人間の思考は発問に素直に反応しますので、否定的発問を行うと、否定的な考え方しかできなくなります。肯定的発問を問いかけることで、メンバーをプラス思考にし、主体的な行動を促すことができるようになります。

未来に向けた発問と過去に向けた発問

「なぜできなかったのか」という過去に向けた発問は、メンバーの思考を過去に向けさせます。現場で行われる「なぜなぜ分析」のように、トラブルの原因となった真因を探るためには有効ですが、これだけでは改善策は出てきません。

「これからどうするか?」という未来に向けた発問をメンバーに問いかけることで、失敗を糧にして未来に向かって歩み続けてもらえるように支援をします。未来に向けた発問はアイデアであり、可能性を見出すことなんですよね。

コーチは過去に向けた発問で会話を締めくくるのではなく、メンバーが前向きに考えられるように未来に向けた発問で会話を終わらせることが望ましいです。

 

まとめ

以上、長くなりましたが発問について書いてきました。

発問の重要なことは、コーチが答えを知るために行うのではなく、メンバーが主体的に物事を考えられるように行うことです。また、犯人探しをするように質問責めにしてメンバーを萎縮させることをせず、未来に向けた肯定的な発問でメンバーを導いていくことですね。

僕もついつい解決策をすぐに示しがちなので、今後はしっかりとメンバーに考えてもらえるような発問を意識して問いかけたいと思います。

それでは、また。

 

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海馬
「無知の知」を自覚し、学び続けています。 増やした知識が単なる記憶の蓄積とならないように、ブログ「知識の海から」を立ち上げました。 学んだことや考えたことをアウトプットしていきます。英語が好きで、独学でTOEIC955点。英国と米国に滞在経験あり。2020年秋に産能大学卒業予定。学べる環境に感謝。